アニサキスとは
寄生虫の一種であるアニサキスは、魚介類に幼虫が寄生し、成虫はクジラやイルカに寄生します。十分に加熱されていない魚介類や生魚に幼虫が寄生している場合、食べると胃に侵入し、激痛を引き起こします。
アニサキスは人間には寄生せず、1週間ほどで死滅します。よく「胃壁をアニサキスが突き刺すので痛む」と言われますが、実際にはアレルギー反応による炎症や腫れが痛みの原因と考えられています。稀に小腸まで到達し、腸閉塞や好酸球性肉芽腫などの重篤な症状を引き起こすこともあります。
アニサキスによる症状
胃アニサキス症
胃アニサキス症は、突然激しい胃痛を引き起こします。痛みが治まった後も再発を繰り返し、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。症状は、アニサキスが寄生した食品を食べてから数時間から数十時間後に現れます。胃カメラ検査でアニサキスの除去が可能です。 検査でアニサキスが発見されなかった場合でも、粘膜のびらんや腫れ、発赤などの症状があれば、アニサキス胃炎と診断されます。こうした症状がある場合はお早めに当院へ受診してください。
腸アニサキス症
腸アニサキス症では、突然激しい下腹部痛が起こります。また、頻脈、発熱、嘔吐などを伴い、腹膜炎に似た症状が現れることもあります。小腸は胃カメラ検査では確認できないため、問診やCTスキャンによって確認します。アニサキスが体内に入ってから数十時間～数日で急に症状が出るため、患者様には「心当たりがない」「何が悪かったのかわからない」とおっしゃる方も少なくありません。また、稀に腸穿孔や腸閉塞などの重篤な病気に繋がるリスクもあるため、注意が必要です。
消化管外アニサキス症
消化管外アニサキス症とは、アニサキスが消化管壁を突き破って腹腔内に出て、肉芽腫を形成する病気です。肉芽腫のできた場所によって、患者様の症状は異なります。
アニサキスアレルギー
アニサキスアレルギーを持つ方が、十分な冷凍や加熱により死滅したアニサキスが混入した食品、またはアニサキスが全て除去された食品を口にした際にアレルギー反応が起こります。特に、サバなどの青魚を食べた際に蕁麻疹などの症状が現れた場合は、アニサキスアレルギーの可能性が考えられます。また、呼吸困難やアナフィラキシーショックなどを発症し、命に関わる恐れもあります。
アニサキスの原因
アニサキスは主に、私たちが普段よく食べる魚や魚介類に寄生しています。例えば、サケ、サンマ、イワシ、アジ、サバ、イカなどです。魚を生で食べた場合に感染する例が多いですが、魚が調理されている場合でも、十分に加熱されていないと感染することがあります。－20℃で24時間以上冷凍するか、十分に加熱すればアニサキスは死滅するため、感染の心配はありません。 アニサキスは肉眼で確認できる透明な糸状の虫です。ブラックライトを当てたり、魚介類を薄切りにしたりすることで多少は発見しやすくなりますが、完全に除去するには冷凍するか加熱する必要があります。
アニサキスの診断
アニサキスは胃カメラ検査で発見でき、その場で取り除くことが可能です。 小腸に達している疑いがある場合は、レントゲンやCTスキャンで確認できます。
アニサキスの治療
胃カメラ検査でアニサキス症が発見された場合は、そのままスコープの先端についた鉗子で取り除きます。 胃の中に食べ物があるとアニサキスがいるか確認しにくいので、検査前は何も食べないようお願いします。肉芽腫が発見された場合、時間の経過とともに徐々に消えていきます。
アニサキスの予防
アニサキスに感染しないためには、魚介類の内部の臓器をすぐに取り除くことが重要です。アニサキスは肉眼でも見える大きさなので、十分に確認して取り除きましょう。ただし、魚の筋肉の中にまで入り込んだアニサキスを見つけるのは困難ですので、心配な場合は十分に加熱調理することをお勧めします。刺身で食べる場合には、－20℃で24時間以上凍結させた後に解凍すると良いでしょう。 しかし、しっかり冷凍してから加熱したり、完全に取り除いたりしても、アニサキスアレルギーの方はアレルギー反応を起こしてしまいます。そのため、アニサキスが寄生している可能性のある魚介類は避けることが望ましいです。