脂質異常症とは
血液中には、コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸、リン脂質の4種類の脂質があります。コレステロールは、消化吸収に欠かせない胆汁酸やホルモン、細胞膜の原料となります。中性脂肪は、内臓を保護して安定させたり、体温を維持したり、活動のためのエネルギー源となったりします。
このように、脂質は体内で重要な役割を果たしていますが、過剰になると様々な病気を引き起こします。その病気のひとつが「脂質異常症」で、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が過剰に増え、HDL(善玉)コレステロールが減少することで起こります。LDLコレステロールが血液中に増えると血管壁に沈着し、動脈硬化に繋がります。一方、HDLコレステロールは余分なコレステロールを集め肝臓に戻す機能があります。
脂質異常症の原因
脂質異常症の原因としては、暴飲暴食、運動不足、肥満、過度の飲酒、喫煙などが挙げられます。また、遺伝によるものもあり、これは「家族性高コレステロール血症」と呼ばれています。
親族に脂質異常症の既往歴のある方がいる場合や、55歳未満の男性、65歳未満の女性で心筋梗塞の既往歴のある人は、脂質異常症の発症リスクが高くなります。
家族性高コレステロール血症の場合は特に悪玉コレステロールが増加するため、動脈硬化が進行するリスクが高く、遺伝因子のない方に比べてリスクが高くなります。
脂質異常症の症状
脂質異常症には自覚症状がほとんどないため、健康診断や人間ドックなどで発見されることが多い病気です。LDLコレステロールが増え、HDLコレステロールが減ると動脈硬化の進行に繋がり、動脈瘤、心筋梗塞、脳梗塞、腎臓病、閉塞性動脈硬化症(足の血管が狭くなったり詰まったりする病気)になる恐れもあります。 特に糖尿病の方や喫煙者の方は重症化しやすいので積極的に治療する必要があります。 中性脂肪値が高い場合、LDLコレステロール値が高い場合よりも動脈硬化が進行するリスクは低いですが、過剰になると膵炎などの病気にかかりやすくなります。
脂質異常症の検査と診断
健康診断で行う血液検査で、脂質異常症かどうかを調べることができます。
発症を予防するためには、定期的に健康診断を受けることが大切です。
検査項目と診断基準
高LDL-コレステロール血症
LDL-コレステロール | 140mg/dL 以上 |
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低HDL-コレステロール血症
HDL-コレステロール | 40mg/dL 未満 |
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高トリグリセリド血症
空腹時の血液中の中性脂肪(トリグリセリド) |
150mg/dL 以上 |
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脂質異常症の治療
食事療法
なるべくコレステロールの少ない食品を摂るようにしてください。カロリー制限が必要なので、次のことを参考に食事内容を変えていきましょう。
目標カロリーを決めて無理なく続けられる範囲で行うことが大切です。
食事療法のポイント
- まずは飽和脂肪酸の摂取量を減らすようにしましょう。飽和脂肪酸は肉の脂身、バター、ラード、生クリーム、インスタントラーメンなどの加工食品に多く含まれます。
- コレステロールは卵黄や魚卵に多く含まれています。飽和脂肪酸の摂取量を減らしても病気が改善しない場合は、コレステロールの摂取量も減らすようにしましょう。
- エネルギーの過剰摂取は中性脂肪値を高める要因となりますので、砂糖や清涼飲料水、甘いお菓子などを食べ過ぎないように注意してください。
- HDLコレステロール値が低いと、連動して中性脂肪値が高くなることが多いので、過度な飲酒や喫煙は控えましょう。また、肥満にならないよう注意しましょう。
運動療法
ご自身の体調や生活スタイルに合った適度な運動を習慣づけることが大切です。運動メニューを医師と確認し、無理のない範囲で毎日行うようにしましょう。具体的には、ウォーキングなどの軽い有酸素運動が効果的です。男性なら1日9,000歩、女性なら1日8,000歩を30分程度で歩けることを目標に、それを週180分以上続けるようにします。
また、手軽に取り組めるものとして、上階に行くときにはなるべく階段を使う、少し離れたところに車を駐車してそこまで歩く、といったこともお勧めします。
薬物療法
食事療法や運動療法などの生活改善を3~6ヶ月間試みても効果が少ない場合に薬物療法を考慮します。薬物療法にはいくつかの種類がありますので、医師の指示に従って服用してください。自己判断で量を調節したり、服用を中止したりすると十分な効果が得られなくなります。ご不明な点などがありましたら、当院までお気軽にご相談ください。
脂質異常症の人が食べるのを控えるべき食品
摂取するコレステロールの量を減らすことが大切です。
コレステロールには、肝臓で合成されるものと、小腸で食物から吸収されるものの2種類があります。
特に、飽和脂肪酸を多く含む食品を食べ過ぎると、血液中のLDLコレステロールの量が増えてしまいます。
そのため、毎日の食事で摂取する飽和脂肪酸の量を制限する必要があります。
飽和脂肪酸は、脂身の多い肉、豚バラ肉、ひき肉、鶏皮、バター、ラード、生クリーム、インスタント麺などの加工食品に多く含まれています。摂取量や摂取頻度に注意しましょう。
一方、魚油などの液体油に多く含まれる不飽和脂肪酸は、血中の中性脂肪を減らす効果があります。特に青魚に含まれるDHA・EPAには、中性脂肪を減らす効果があるため、積極的に摂取することをお勧めします。